うつ病、パニック障害、不安障害の治療法として認知行動療法というものがあります。

現在は日本でも徐々に知られるようになってきましたが、インターネットで検索してみてもその中身がなかなか複雑ですので、個人的にまとめてみたいと思います。

今日知っていただきたいのは

認知行動療法は、「考え方を無理に変える」ものではなく、自分の中で起きている悪循環に気づき、少しずつ別の選択肢を増やしていく方法だということです。

認知行動療法(CBT)とは

認知行動療法とは「認知」つまり考え方・物事の捉え方と「行動」に働きかけて、その変容を目指す精神療法(心理療法)の一種です。

アメリカで、うつ病に対する精神療法として開発されましたが、今では不安障害(不安症)・パニック障害・強迫障害などの治療に広く取り入れられるようになってきました。

日本では厚生労働省の「心の健康」サイトで、認知療法・認知行動療法に関する情報や、パニック障害・社交不安障害などの治療者向けマニュアル、届出医療機関リストが公開されています。

認知行動療法には必要に応じて様々な技法が用いられるのですが、

決して技法ありきの心理療法ではなく、認知行動療法家(医師・公認心理師など)とクライアント(患者)の関係性が重要になります。

認知行動療法は、1回きりで終わるものというより、複数回の面接を通して少しずつ進めていくことが多い心理療法だからです。

回数や時間は、症状や医療機関、プログラムによって異なりますが、週1回程度の面接を数か月かけて行う形がよく見られます。

もし認知行動療法を受けたいと思って医療機関や療法家を探す場合は、

クライアントの主体性を尊重し、クライアントが自分の意見を表現しやすい雰囲気を作り出しながら、クライアントが自分で答えを見つけだしていけるような関わりをしてくれる療法家の方が理想とされています。

認知行動療法で行うこと

たとえば代表的なプログラムには下記のようなものがあります。

タイトルから想像できるものも、そうでないものもあると思います。気になったものがあれば調べてみてくださいね。

認知的・行動的技法

  • 認知再構成
  • 行動実験
  • 暴露/エクスポージャー
  • リラクゼーション
  • 問題解決技法
  • アサーション・トレーニングなど

これらは、すべてを一度に行うものではありません。困っている症状や目標に合わせて、必要なものを組み合わせていきます。

認知再構成とは

ここでは上の認知的技法の中からひとつ、「認知再構成」というものを紹介したいと思います。

自分では自分の認知(考え方・物事の捉え方)になかなか気づかないものですが、

代表的な「捉え方の癖」には次のようなものがあります。

物事に良い面があっても「たいしたことはない」と否定する

▶︎嫌いな人の良い面は目に入らず、悪い面しか見えなくなってしまう

根拠がないのに、相手の気持ちを決めつけて勝手な解釈をする

▶︎上司は私を嫌っていると勝手に思い込む

あるひとつの出来事で、破局的な見方をしてしまう

▶︎失恋したので、この世の終わりのように考える

「~すべきである」という言い方が動機や行動を支配している

▶︎「自分は外で仕事をしていないんだから毎日家事は完璧にやるべき」と考える

物事は複数の要因が関連しているのに、自分が原因であると考える

▶︎自分が原因ではないようなトラブルに対して「私がいけなかったんだ」と考える

まずは自分の癖として、上のような考え方をしていないかを点検していきます。

そして、認知行動療法家の助けを借りながら、「どうしてそのように考えるようになったか」「他の考え方はできないか」などを検討していきます。

認知再構成ロールプレイ

ここで一つ、実際の認知再構成の例を見てみましょう。


たとえば電車の中で少し動悸を感じたとします。

そのときに、

「また発作が起きるかもしれない」「ここで倒れたらどうしよう」「逃げられない」と考えると、不安はさらに強くなり動悸や息苦しさも強く感じられるかもしれません。

すると次から、電車に乗ること自体を避けたくなります。

認知行動療法では、このような流れを一緒に整理していきます。

「動悸がした=必ず発作が起きる」と決めつけていない?

過去に動悸がしても、しばらくしたら落ち着いたことはなかった?

もし不安が出たとしても、できる対処はない?

このように認知再構成では、

さまざま問いかけを受けることを通じて別の考え方行動の選択肢を確認します。

そして、ひとつの考えに強く引っ張られている状態を少しずつほぐしていきます。

認知行動療法とリラックス

リラクゼーションとは緊張をゆるめることです。

認知行動療法では、プログラムの1つにリラクゼーションというものがあるほど、緊張をゆるめることも大切にされています。

中には呼吸法やマインドフルネスなど身体を使ったプログラムも複数あり、touch treeとしてはここをセルフケアとして大切にしたいと思っています。

詳しくはまた機会を改めてご紹介しますね。

認知行動療法の目標

認知行動療法の目標は、目の前の問題を解決するだけでなく、将来の問題に対する解決能力を身につけることです。

よく誤解されやすいのが、ネガティブな考え方をポジティブに変えなければいけないと思うことです。それは認知行動療法の目的ではありません。

自分が不合理な考え方をしているなと気づいたら、他の考え方もあることに目を向けて、元々の考え方を相対的に弱めることで悪循環を断ち切ろうとします。

いくら不合理な考え方であっても、今までの自分の考え方を急に変えろと言われても抵抗があったり、初めはなかなか上手くいかないかもしれません。

無理矢理にではなく、選択肢として「他の考え方があるんだ」と徐々に気づいていくことができる点

認知行動療法は、今ツライ人にとっても取り入れやすいのかなと個人的には思います。

認知行動療法は、つらさを気合いで乗り越えるためのものではなく、自分の中にある悪循環に気づき、少しずつ別の選択肢を増やしていくための方法です。

その考え方を知っておくことも、きっと小さな安心材料のひとつになるのではないかと思います。

RUISA


参考にしたサイト

認知行動療法センター https://cbt.ncnp.go.jp

厚生労働省 心の健康サイト https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html

※医療機関で認知行動療法を受けたい場合は、上記厚生労働省のHPにある届出医療機関リストを確認する方法もあります。

千葉大学大学院医学研究院 慢性疼痛の認知行動療法プログラム 低強度マニュアル https://www.cocoro.chiba-u.jp/pain/low.html